相続税を一度に支払う手持ちの現金がない場合

納税の方法を検討する

相続税の納付は、相続税の申告期限(相続の開始があったことを知った日から10月以内)に、金銭で一括納付することが原則です。

しかし、相続した財産のほとんどが不動産や同族会社の株式や同族会社への貸付金であった場合など、相続税を申告期限(相続の開始があったことを知った日から10か月)までに金銭で一括納付することが困難である場合には、相続税を分割納付する延納や相続財産そのもので納める物納の制度を活用する検討をする必要があります。

延納について

延納とは、相続税の納付税額が10万円を超え、金銭で一括納付することが困難な事由がある場合に、認められる金銭で分割納付する制度です。
延納の期間は、相続財産に占める不動産・同族会社の株式(不動産等)の割合によって分割できる期間が変わります。

不動産等の割合が50%未満の場合は5年以内が原則です。

不動産等の割合が50%以上75%未満の場合は、不動産等に対応する部分の相続税額は15年、それ以外の部分の相続税額は10年が原則です。
不動産等の割合が75%以上の場合は、不動産等に対応する部分の相続税額は20年、それ以外の部分の相続税額は10年が原則です。
ただし、延納の制度を活用する場合には、原則として延納税額に相当する担保を提供する必要があります。

また、延納期間中は、法律で定められた割合の利子税を毎年の分納税額に併せて納付する必要があります。

物納について

物納とは、相続税を相続した財産そのもので現物納付する制度で、相続税を金銭で一時又は延納によっても納付することが困難な場合に、納付困難な金額の範囲内で認められる制度です。

ただし、どんな財産でも物納が認められるということではなく、また、物納できる順位も決められています。

物納が認められる財産は、
①不動産及び船舶
②国債証券及び地方債証券
③上場株式・社債(短期社債を除く)
④非上場株式等
⑤動産
で、各財産の物納の順位は下記のとおりです。物納劣後財産とは、借地として賃貸している土地など、売却等がしにくい財産のことを言います。

順位 物納に充てることができる財産の種類
第一順位 ①不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等
②不動産及び上場株式のうち、物納劣後財産に該当するもの
第二順位 ①非上場株式等
②非上場株式のうち、物納劣後財産に該当するもの
第三順位 動産

また、境界が明らかでない土地は物納できませんので、土地を物納する場合には、境界確定の作業等事前の準備が必要です。